もっと快適に読む
画面で読むのに向いた書体
書体選びは読書設定のなかでいちばん楽しく、いちばん重要でない項目です。気にするなという話ではありません。組みの悪いページを書体が救ってくれると期待するな、という話です。
短い答え:画面読書のために設計された書体を、無理のないサイズで、たっぷりした行間で使うこと。Literata、Bookerly、Charter、Georgia、Source Serif はどれも機能します。好みなら良質なサンセリフでも構いません。あとは調整をやめて読みましょう。
画面ではセリフかサンセリフか
古い定石は「印刷はセリフ、画面はサンセリフ」でした。初期のディスプレイが細いセリフを描けなかったからです。その制約は消えました。いまのスマートフォンの画素密度は、当時のレーザープリンターより高いのです。どちらでも通用します。
画面上の読書速度と理解度でセリフとサンセリフを比べた研究の多くは、意味のある差を見つけていません。見つかっているのは、よく見慣れた書体のほうがわずかに速く読めるということ。つまり字形そのものより慣れのほうが効いている可能性が高いのです。
使える結論はこうです。セリフのほうが本らしく感じられ、長時間の読書が「画面を見ている」感じになりにくい。サンセリフは小さいサイズや低解像度、電子ペーパーでより明瞭に保たれる。好きなほうを使ってください。
書体を実際に読みやすくするもの
- 大きな x ハイト。大文字に対して小文字が高いと、同じ公称サイズでも見える字面が大きくなります。同じ 16px でも小さく見える書体とちょうどよく見える書体があるのはこのためです。
- 開いたアパチュア。c、e、s のような字の開口部が閉じないこと。小サイズで形がつぶれて混ざらずに済みます。
- 似た字が見分けられること。大文字 I、小文字 l、数字の 1 が同じに見えてはいけません。O と 0、rn と m も同様です。
- 線の太さの対比は控えめに。髪の毛のように細い線を持つ優美な書体は、バックライト画面の読書サイズでは消えてしまいます。
- 本物のイタリック。本はイタリックを絶えず使います。イタリックが正体を斜めにしただけの書体では、強調も書名も読みにくくなります。
試す価値のある書体
Literata は Google Play ブックスのために画面読書を目的として設計され、堅実な既定になります。骨太で x ハイトが大きく、何時間でも快適です。Bookerly は同じ狙いで Kindle 向けに作られました。Charter とその公開版 Charis は低解像度で保つよう設計されており、電子ペーパーで優秀です。Georgia は数十年前の書体ながらほぼすべての端末に載っており、いまも画面向けセリフとして最も読みやすい部類です。Source Serif と Merriweather は画面サイズの本文用に作られた公開書体です。
サンセリフでは Atkinson Hyperlegible を知っておく価値があります。Braille Institute が、弱視の読者のために文字の判別性を最大化する目的で設計したもので、それ以外の人にも心地よい書体です。Inter、Source Sans、Open Sans はいずれも無難です。
OpenDyslexic について正直に
OpenDyslexic は各文字の下部を重くして、形が反転しにくいようにしています。好んで使う読者は多く、その好みは本物です。ただし、同じサイズ・同じ字間でディスレクシア向け書体と一般的なサンセリフを比べた対照研究では、速度でも正確さでも優位は確認されていません。字間を広げたほうには優位が出ました。
だから正直な立場はこうです。試し、心地よければ使い、それを決定打だと考えないこと。字間の設定のほうが効きます。全体の設定は ディスレクシアに配慮した読書設定 にまとめています。
書体に勝つ 3 つの設定
- サイズ。多くの人は少なくとも 1 段階小さすぎる設定で読んでいます。既定値は一晩の読書ではなくスクリーンショットのために選ばれているからです。
- 行間。本文で 1.5〜1.6 程度。行送りが詰まっていることは、ページが重く感じる最大の原因です。
- 行長。およそ 55〜70 字。縦持ちのスマートフォンならほぼ自動的にそうなり、横持ちのタブレットでは余白が必要になります。
この 3 つを平凡なシステム書体で整えれば、美しい書体を悪いレイアウトに押し込んだページより読みやすくなります。
忘れられがちな 2 点
本にも意見がある。よくできた EPUB は理由があって書体とスタイルを指定しています。すべてを 1 書体で上書きすると、詩もドロップキャップもスモールキャップも均一な文字列に潰れます。良いリーダーは、選ばせつつ著者の構造を保ちます。Lectern はそのように扱います。
画面は書体と同じくらい効く。同じ書体でも OLED、液晶、電子ペーパーでは挙動が違い、適切なウエイトも 3 者で同じではありません。その比較は OLED と電子ペーパーで読む にあります。
よくある質問
読書にはセリフとサンセリフのどちらが良いですか。
現代の画面ではどちらでもかまいません。研究は速度や理解度に意味のある差を見つけていません。分類より、慣れと適切な字間・行間のほうが効きます。見た目の好みで選んでください。
スマートフォンで最も読みやすい書体は。
画面向けに設計された本文書体なら何でも。Literata、Bookerly、Charter、Georgia、Source Serif、あるいは Atkinson Hyperlegible のような明快なサンセリフ。そのうえでサイズは、最初に思ったより 1 段階大きくしてください。
OpenDyslexic はディスレクシアに効きますか。
強く好む読者がいるのは事実で、それには意味があります。ただし対照研究では、同じサイズ・同じ字間の一般的な書体より速い・正確という結果は出ていません。字間の調整のほうが価値の高い変更です。
本が指定する書体を上書きすべきですか。
その指定が読みにくいときだけです。丁寧に作られた EPUB は、詩やドロップキャップや見出しのために意図して書体を使っています。すべて置き換えるとその構造が潰れます。
続けて読む